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 道路の真ん中にそれは落ちていた。
手足をだらりと伸ばして横たわっている。半眼の暗い眼が世界を吸い込む。真っ黒な猫の死骸。

 車通りは少ないとはいえ、全くないわけでもなく、既に息絶えた猫の上を何台もの自動車が通過 している。タイヤに踏まれてこそいないものの、無残な情景に変わりはなく、死後に至ってまで そんな姿を晒す猫は哀れであると言えた。

 人々はそれを目に留め、或いは無視し、或いは眉を顰め、或いは大袈裟に不快感を演じ連れの 笑いを取って通り過ぎて行く。沈黙した猫はどろんとした、文字通り生気のない目を向けるのみだ。

 車の往来が途切れる。

 不意に人影が走った。

猫とお揃いの真っ黒なシルエット。ツンツンと立てた髪と無駄に長い学ランは明らかにそれと わかる不良の出で立ちだ。車道の中央に下り立った少年は、黒猫をそっと抱き上げた。白い手が 赤く染まる。

 車のクラクションが響く。
彼は急いで歩道へと引き返した。冷たい人間達の視線を浴びながら、猫を抱いたまま立ち尽くす。 逡巡するような間の後、少年は道の端、植え込みの影へと猫を横たえた。

汚れた手を気にする風もなく、少年はポケットへ手を突っ込む。不良らしい猫背気味の姿勢は 先程の素早い動作に結び付かない。そうして、そのまま立ち去って行く。

 ゆらゆらと歩く後姿が、黒猫の瞳に映っていた。







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