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【SIDE-B】


 きらり。空と水の境界線で光が弾ける。
味気のない白は虹色に変化する。眩しい。だが惹き付けられる。

(綺麗だ。)

 彼は時折姿を見せる。力強く水を蹴り空中に。
自分の羽を焼く強力なはずの陽光は、その滑らかな肌にいとも容易く撥ね返され、彼を七色に染め上げる。

 彼の名を自分は知らない。
わかるのはただ、彼の弾いた光が何事にも比べ難く美しいということ。そして、

(あれが欲しい。)

 それが、多分叶わぬ願いだということ。

(いや方法はある。)

 傲慢な自分の心がその方法を提示する。

 しかし、手に入る代わりにその輝きが失われるであろうこともまた、自分は知っている。

(欲しい欲しい。)

 欲望と抑制とが対立する。僅か欲望が勝っている。

(ああまた、)

 真下で光の破片が散った。中心に彼がいる。翠玉みたいだ。

(欲しい。)

 その強くしなやかな身体を。

 大きく咽び鳴いた。
そうしながら鳥は大きく上空を迂回し、また元の場所に戻ってくる。いや先よりは低空に。



 抑えていた欲望が、暴走する。











【SIDE-F】


 感謝の念と共に仲間意識が芽生えた時のことは覚えている。

そして尊敬という感情が生まれたのが日々の生活の中でというのなら、 その矛先が間違った方向へと向かってしまったのもまた、そうであるとすべきだろうか。

 寝間着の釦をのろのろと留めていく。
鷹村を追い出したのは、胸やら鎖骨やらに散った痣の名残を見られたくなかったからだ。もっとも彼はその 痣を付けた張本人であるのだが、本人だからこそ見られて気まずいということもある。

(これはどれくらいで消えるんだっけ?)

 身体に残るそれは一昨日よりも大分薄くなったようにも見えるし、全く変わらなくも思える。意識が過去に 飛んだ。





***





(二度目だ)

 首筋に感じる熱い吐息。挑戦的に対象を真っ直ぐ貫く視線はボクシングに打ち込む姿と重なるが、 試合の時とは少し違う。だが彼の真剣な表情を見る時、決まって思い起こすのはノックダウンの瞬間だ。

「あ…ッ」

 上擦った声が零れる。たまらない羞恥心が湧き起こって木村の思考はフリーズした。

顔を覆いたくて腕を動かすのだが、頭上に両腕まとめて押え付けられたそれはびくともしない。せめて 後ろからにしてくれればいいのにと思う。正常位では互いの表情がわかってしまう。それが嫌だ。

 鷹村のごつくて長い指が木村の中をかき回していた。

 下着はズボンと共に下ろされ右足首に絡み付いている。シャツは釦三つ分だけ胸元が肌蹴ていたが、 下から捲り上げられてしまった今となっては、それもあまり関係がなかった。

 開いた両脚の間に鷹村のデカい図体が割り込んでいるので、木村は磔にされた蛙のような情けない恰好を 強いられることとなっている。しかしながら鷹村は木村に覆い被さるような姿勢でいるわけだから、 その全体像を彼に見られることはない。

 初めはあまりの異物感にひたすら呻き声と溜息とを繰り返していた。

それが快感に変わったのがつい先刻だ。鷹村の指がその一点を擦ると木村の身体が跳ねる。あまり顕著な 反応をするものだから鷹村にもそこがわかってしまったらしい。執拗に嬲られると木村の意志とは無関係に 腰が揺れ、穴が咥え込んだ指を締め付ける。ペニスはいつの間にか勃起して先端に液を滲ませていた。

 指が三本程入るようになったところで引き抜かれた。
鷹村が片手で器用に己のベルトを外し、ファスナーを下ろす。彼が取り出したモノは木村の視界には 入らなかったが、後ろに押し当てられた熱に数ヶ月前の痛みを思い出す。

 反射的に足が閉じた。
だがそれは逆効果であったようで、太腿が鷹村の腰を挟む形になりまるで強請ってでもいるかのような 行動になってしまった。鷹村が顔を上げにやりと笑う。

「突っ込んで欲しいんだろ?」

「違っ…いッ!ぐ、アア」

 圧倒的な質量が侵入を開始する。
木村の身体が仰け反り足が鷹村を押し退けようともがく。

小さく舌打ちの音が聞こえて、それが何故か胸に引っ掛かれたような痛みを与え木村は混乱した。

その拍子に一瞬身体の力が抜ける。鷹村がこの時とばかりに一気に押し入ってきた。 鈍痛に涙が溢れ飲み込み切れなかった唾液が顎を伝う。視界がちかちかと点滅した。

「ッ…てぇ、は…、くるし…」

 言うまいと思うのに勝手に声が零れる。
いつ目を瞑ったのか視界は真っ暗で、これもいつ解かれたものか両手は自由だった。鷹村がぐっと 身体を寄せる。さらに奥深くまで抉られ、同時に頬に熱っぽく湿った息を感じた。

「木村」

「ひッ、あ…」

 身体が震えた。またおかしな声が出たがもうどうでも良かった。解放された腕は鷹村を押し退ける でなく縋り付くように首に回される。

 すぐに抽挿が始まるものと思っていた。
だが鷹村は動かず、しばらくは木村の耳を舐めたり、胸から腹にかけて愛撫するように手を這わせたり していた。胸の突起が摘まれ、先を引っ掛かれる。

表現し難いムズ痒い刺激と下肢を貫く痛みに挟まれて、木村は眉根を寄せ喉を反らせた。 無防備な白を鷹村の唇が辿っていく。

 それは顎に達した後、何の予告もなく木村の唇を食んだ。気がした。
一瞬のことでよくわからなかった。ただちゅっと濡れた音だけが妙に耳に残った。

「今の…」

 何、と聞こうとした直後、性急に繋がった部位が離れた。ずるりと肉棒が内側を擦る感触に木村の顔が歪む。

「ふうッ…、ンン…」

 高熱に魘されたような声が息に乗って弱々しく洩れ出てくる。
ずる、ずると内壁を引き出すように鷹村の雄は出し入れされ、括約筋の摩擦による奇妙な感覚と痛み を木村は必死になって耐えた。

 だがしばらく我慢していると、慣れてきたのか気持ちにも多少の裕りが生まれる。
固く閉じていた瞼を上げると、情欲に濡れた鷹村の瞳が目に入った。木村が咥え込んだモノを不規則に 締め付ける度、彼の唇が微かに歪む。赤い舌がべろりと上唇の唾液を舐め取り、珍しく真剣な、余裕のない 彼の表情を誇張した。

 木村の呼吸と彼の反応は一致していた。しているように見えた。
いやそれ以上に、身体が繋がっているという事実に木村は改めて気付いた。

 初体験を迎えた恋愛漫画のヒロインでもあるまいし、繋がるも糞も、普段の木村ならそんな少女染みた 思考に嵌ることはない。この一時的な接続は事が済めば実に呆気なく切断されるのだ。二つの個体は一つ にはなれない。

(俺は鷹村さんにはなれない)

 そんなの知ってる。
どんなに走っても、どんなに練習しても、どんなに足掻いても、どんなに上を見ても、 見上げても。こんなに傍にいても。彼の強さは彼のもので、 憧れても妬んでもそれは木村のものにはならない。ましてやこの行為に一体どれ程の意味があるのか。

 それでも今一つであるという思想は、木村の心にえも言われぬ満足感を齎した。






***





 だから気まずい、と木村は思った。会わせる顔がないとは正にこのことだ。
結局鷹村が射精するまであの奇妙な時間と感覚は続いたわけだが、勿論その後二人の間に何か変化が あったわけでなく、ただ嫌な沈黙だけを残して木村は彼のアパートを出たのだ。

 鷹村がどういうつもりで自分を抱いたのかは知らない。だが理不尽大王にまともな理由を求めるだけ 無駄なことを木村は知っていた。そしてその大王以上に理不尽な自分の気持ちも知ってしまった。

 どうこうしようという気はない。だがどうにかしなければという焦りはある。

「何ぼけっとしてんだよ。病人は大人しく寝ていやがれ、ほらよ」

 ドアの開く音と共に鷹村の低い声が鼓膜を揺する。
近距離で投げられたペットボトルを受け止め、木村は鷹村を見た。







≫NEXT



■あとがき■

しばらく間が空いたので、何が書きたいのか余計に意味不明になってきました。汗。
でもお陰で返って収拾がつきそうな感じでしょうか。
前はどうまとめようか途方に暮れてたからな…。
あと自分にエリョは無理だと再自覚。
こんな駄文を果たして公開していいものか。げふげふ。

此方でお題をお借りしました≫モノクロ写真
魚と鳥!なんて素敵に鷹木なんだ…!と興奮しまくりで挑戦しました。笑。